【宮城県全域対応】一般貨物自動車運送事業許可|施設要件(営業所・車庫)を解説【第3回】

トラック

施設要件は新規許可申請で最もつまずきやすい部分です。宮城県内では市街化調整区域の農地転用、私道の通行承諾、狭隘道路の幅員問題などが頻発し、契約後に「使えなかった」と後悔するケースが後を絶ちません。

2026年4月改正の影響 改正貨物自動車運送事業法(令和8年4月1日施行)は白トラ対策・再委託規制が中心で、施設要件の基準自体は変更なし。ただし2028年度以降予定の5年更新制では、長期的に適正な施設の継続性がより厳しく問われる可能性が高いため、最初から長期使用可能な物件を選ぶことを強くおすすめします。

目次

なぜ施設要件は難しいのか

施設要件が難しい理由は、複数の法令が絡み合うからです。貨物自動車運送事業法だけでなく、都市計画法、農地法、道路法、建築基準法など、さまざまな法律が関係します。

例えば、「安い土地を見つけた」と思って契約しても、その土地が農地なら農地転用許可が必要です。市街化調整区域なら開発許可も必要になるかもしれません。前面道路が私道なら所有者全員の承諾書が必要です。

これらの手続きを知らずに契約してしまうと、時間と費用の大きな損失につながります。

2026年4月改正と施設要件の関係

令和8年(2026年)4月1日施行の改正法は、違法白トラ対策や下請け規制が中心で、**施設要件の基準自体は変わっていません。**つまり、従来通りの要件をクリアすれば問題ありません。

ただし、2028年度以降に予定されている5年更新制では、継続的に使用できる適正な施設かどうかがより重視される可能性があります。「とりあえず許可を取る」のではなく、長期的に使える施設を最初から確保することが重要です。

営業所の要件(主なポイント)

  • 机・電話・書類保管スペースは最低限。本質は法令適合
  • 都市計画法の壁:都市計画、用途地域の確認
    • 商業・工業地域:原則OK(仙台中心部、工業団地など)。
    • 住宅地(第一種・第二種低層、中高層住居専用地域):基本NG!兼用住宅なら可だが、市町村都市計画課、運輸支局で事前確認必須。
    • 市街化調整区域(農村部等):原則NG、既存建物でも開発許可が必要な場合多し。
  • 地目が「田」「畑」の場合 :原則NG。農地転用許可必須。
    • 市街化区域内(仙台・名取など):2〜3週間程度。
    • 市街化調整区域・非線引区域:県知事許可で2〜4ヶ月かかる。
  • 自宅兼用営業所の注意 居住部分と明確に区分(入口別・間仕切り)。用途地域確認必須。

机と電話があれば良い、は大きな誤解

「営業所なんて、机と電話があれば良いんでしょ?」

これは最もよくある誤解です。確かに設備として机、電話、パソコン、書類保管スペースは必要ですが、それは最低限の話です。本当に難しいのは、その場所が法律的に営業所として使えるかどうかの判断です。

都市計画法という大きな壁

営業所を設置する土地が、都市計画法上のどの区域に該当するかで、使えるかどうかが大きく変わります。

商業地域や工業地域なら問題ない

仙台市の中心部や、各市町村の商業エリア、工業団地などは、ほとんどの場合問題ありません。これらは商業地域、工業地域、準工業地域に指定されていることが多く、運送業の営業所は原則として設置可能です。

住宅地は要注意

ところが、富谷市、名取市、利府町などの住宅地では注意が必要です。第一種低層住居専用地域などの住居系地域では、営業所の規模や業態によって制限があります。自宅兼用の小規模事務所なら認められる場合もありますが、必ず市町村の都市計画課で事前確認が必要です。

市街化調整区域は最も厳しい

登米市、栗原市、大崎市など県北の農村部に多い市街化調整区域は、最も厳しい制限があります。ここは「市街化を抑制すべき区域」として指定されているため、原則として建築が制限されます。

既存の建物があっても、用途を変更して営業所にするには開発許可が必要な場合があります。「建物があるから大丈夫」と思って契約すると、後で使えないことが判明して困るケースが後を絶ちません。

地目が「田」「畑」なら農地転用が必須

登記簿謄本を取得すると、地目という欄があります。ここに「宅地」と書いてあれば問題ありませんが、「田」や「畑」となっていたら要注意です。

農地を営業所として使用するには、農地法に基づく農地転用許可が必要です。この手続きには時間がかかります。

市街化区域内なら比較的早い

仙台市、名取市、岩沼市などの市街化区域内の農地なら、農業委員会への届出で2~3週間程度で済みます。

市街化調整区域なら数ヶ月かかる

ところが、大崎市、栗原市、登米市、美里町など農村部の市街化調整区域や非線引区域の農地は、県知事の許可が必要で、審査に2~4ヶ月かかります。

つまり、「良い物件を見つけた」と思っても、農地転用の手続きが完了するまで、実際には使えないということです。この期間中も賃料を払い続けるのか、それとも転用完了後に契約するのか、事前に計画が必要です。

自宅兼用営業所の落とし穴

「自宅の一部を営業所にすれば家賃もかからない」と考える方は多いですが、これにも注意点があります。

独立性の確保が絶対条件

家族の居住スペースと営業所が混在していると不適合になります。平面図を作成し、営業所部分と居住部分を明確に区分する必要があります。具体的には、入口を分ける、間仕切りで区切る、使用スペースを明示するなどの対応が求められます。

用途地域の確認も忘れずに

住宅地の第一種低層住居専用地域などでは、営業所として使えない場合もあります。自宅だからといって安心せず、必ず市町村の都市計画課で確認しましょう。

車庫の要件(最も問題が多い要件)

施設要件の中で、最も不適合が多いのが車庫です。特に前面道路の問題で、申請が遅延したり、物件を変更せざるを得なくなったりするケースが頻発しています。車庫は事業用トラック専用で常時収容・点検・整備可能であることが必須。

  • 地目問題:営業所同様、農地なら転用手続き。
  • 前面道路幅員 普通貨物車の場合、6.5m以上が実務上の目安(車両制限令に基づく)。
    • 国道:幅員証明不要。
    • 市町村道・県道:道路管理者(市町村建設課、道路管理課、土木事務所等)で幅員証明書取得。
    • 狭隘道路(市街地の4m未満の道路):物件変更推奨。
  • 私道・法定外道路(赤道)の落とし穴
    • 私道:所有者全員の通行承諾書必須。
    • 法定外道路:市町村使用許可が必要。
  • 月極駐車場を使う場合
    • トラック専用(乗用車混在NG)+24時間出入自由の証明必須。
    • 一般月極(幅2.5m区画)はスペース不足で不適合多し → 複数区画連結 or トラック対応型を選ぶ。

農地問題は営業所と同じ

車庫についても、地目が「田」「畑」なら農地転用許可が必要です。空き地を見つけて「ここを車庫にしよう」と思っても、登記簿を確認すると農地だった、というケースは非常に多いです。

農村部(登米市、栗原市、大崎市)で車庫を探す場合は、必ず地目を確認し、農地なら転用手続きのスケジュールを考慮してください。

前面道路が全てを決める

車庫の適否を決める最大のポイントは、前面道路の幅員です。

幅員証明書とは何か

車庫の前面道路が、使用する車両の通行に十分な幅があることを証明する書類が幅員証明書です。市町村道なら市町村の道路管理担当課、県道なら県土木事務所で取得します。

ちなみに国道に面している場合は、幅員証明書は不要です。国道は十分な幅員があるためです。

必要な幅員はどのくらいか

一般的に、普通貨物車(車幅2.5メートル程度)の場合、前面道路幅員5.5メートル以上が望ましいとされています。ただし、道路の状況や車両のサイズによって個別に判断されます。

道路法の車両制限令では、車幅の一般的制限値は2.5メートルです。この幅の車両に対し、前面道路は5.5メートル以上が望ましいというのが実務上の基準です。

仙台市街地や住宅地の悩み

仙台市の青葉区、宮城野区などの市街地や、富谷市、名取市などの住宅地では、幅員4メートル未満の狭い道路が多く存在します。こうした場所で車庫を確保するのは、非常に難しい課題です。

幅員が不足している場合、最も確実な対策は車庫の場所を変更することです。幹線道路沿いや工業団地内の物件を検討しましょう。

宮城県内の工業団地としては、仙台港背後地流通業務団地(宮城野区)、仙台泉パークタウン工業団地(泉区)、大和リサーチパーク(大和町)、岩沼臨空工業団地(岩沼市)、角田中央工業団地(角田市)などがあります。

私道という隠れた問題

道路には公道と私道があります。公道なら幅員証明書を取得すれば良いのですが、私道の場合は所有者全員の通行承諾書が必要です。

富谷市、名取市などの住宅地に多い

宮城県内では、富谷市、名取市、利府町などの住宅地で私道が多く見られます。一見普通の道路に見えても、実は私道だったというケースがあります。

所有者全員の承諾が必要

私道の場合、所有者全員から「一般貨物自動車運送事業のトラックが通行することを承諾する」という書面をもらう必要があります。所有者が複数いる場合、一人でも反対されると通行できません。

物件を決める前に、前面道路が公道か私道かを必ず確認しましょう。法務局で公図を取得すれば、道路の種類が分かります。

法定外道路(赤道)という落とし穴

もう一つ厄介なのが、法定外道路(通称「赤道」)です。これは昔からある道で、道路法の適用を受けない道路のことです。

登米市、栗原市、大崎市など農村部に多い

県北の農村部では、法定外道路が多く存在します。こうした道路を通行する場合、市町村から使用許可を得る必要があります。

見た目は普通の道路でも、実は法定外道路だったということがあります。物件を決める前に、市町村の道路管理担当課で確認することをおすすめします。

月極駐車場を車庫にする場合の注意

既存の月極駐車場を車庫として使おうと考える方もいますが、これにも条件があります。

トラック専用であること、24時間出入り自由であることの証明が必要です。一般の乗用車と混在している駐車場や、夜間は閉鎖される駐車場は使えません。


沿岸部特有の問題:津波浸水想定区域

石巻市、気仙沼市、東松島市、女川町など沿岸部で車庫を確保する場合、津波浸水想定区域に該当しないか確認が必要です。

該当する場合、許可が下りないわけではありませんが、避難計画や安全対策について説明を求められる場合があります。また、震災後の区画整理で道路の状況が変化している地域もあるため、最新の道路情報を確認しましょう。


県北特有の問題:冬季対策

登米市、栗原市、大崎市など県北では、冬季の降雪・路面凍結対策も考慮する必要があります。

車庫の除雪体制、暖房設備、冬季でも車両が出入りできる体制が整っているかが確認されます。特に山間部では、大雪で車庫から車両が出せなくなるような状況は避けなければなりません。

休憩・睡眠施設の要件

  • 営業所または車庫に併設。
  • 運転者が有効利用できる適切な施設(小規模なら営業所内にスペース確保)。
  • 睡眠が必要な乗務員1人あたり2.5㎡以上。

営業所や車庫に比べて注目されにくいですが、休憩・睡眠施設も必須の要件です。

運転者が適切に休憩・睡眠できる施設を、営業所または車庫に併設する必要があります。小規模事業者の場合、営業所内に休憩スペースを設けることで対応可能です。

長距離運行が多い場合や、冬季の県北では暖房設備も重要です。単に部屋があれば良いというものではなく、実際に運転者が休憩できる環境を整えることが求められます。

施設要件と資金要件は表裏一体

施設要件で立派な計画を立てても、それを裏付ける資金がなければ意味がありません。

営業所の賃料が月額10万円、車庫の賃料が月額15万円なら、最低でも6ヶ月分の150万円が必要資金に含まれます。所有の場合は固定資産税、光熱費なども必要です。

「場所は確保した」だけでは不十分で、その場所を継続的に使用できる資金計画が審査されます。次回の第4回では、この資金要件について詳しく解説します。

失敗しないための3つのチェックポイント

施設要件で失敗しないために、物件を決める前に必ず以下の3点を確認してください。

チェック1:登記簿謄本で地目を確認

地目が「田」「畑」なら農地転用が必要です。転用には時間がかかるため、スケジュールに組み込みましょう。「山林」の場合も地目変更や開発許可が必要な場合があります。

チェック2:市町村の都市計画課で用途地域を確認

市街化区域か、市街化調整区域か、非線引区域か、そして用途地域は何かを確認します。住居専用地域や市街化調整区域では制限があります。

チェック3:前面道路の種類と幅員を確認

公道か私道か法定外道路かを確認します。公道なら幅員証明書が取得できるか、私道なら所有者の承諾が得られるか、法定外道路なら市町村の許可が得られるかを確認します。

この3つを事前に確認するだけで、多くの失敗を避けることができます。


宮城運輸支局での事前相談を活用しよう

「この物件で大丈夫だろうか?」と迷ったら、契約前に宮城運輸支局で事前相談することを強くおすすめします。

事前相談では、具体的な物件の情報(住所、地目、用途地域、前面道路など)を持参すれば、問題点を指摘してもらえます。契約してから「使えない」と分かるより、契約前に確認する方がはるかに安全です。


まとめ|施設要件は事前準備が全て

施設要件は、一般貨物自動車運送事業の許可申請の中で最も時間と手間がかかる部分です。特に宮城県内では、市街化調整区域の農地転用、私道の通行承諾書、狭小道路の幅員問題など、地域特有の課題が多く存在します。

重要なのは、物件を決める前の事前確認です。契約してから問題が発覚すると、時間と費用の大きな損失につながります。登記簿謄本、都市計画、前面道路の3点を必ず確認し、不安があれば宮城運輸支局や専門家に相談しましょう。

2026年4月の改正で施設要件の基準自体は変わっていませんが、2028年度以降の5年更新制を見据えると、長期的に使える適正な施設を最初から確保することが重要です。

宮城県全域(仙台市、富谷市、石巻市、大崎市、栗原市、登米市、気仙沼市ほか全35市町村)で新規参入を検討される方は、必ず物件契約前に専門家に相談してください。


次回予告【第4回】車両・資金要件と申請フロー

シリーズ最終回となる次回は、車両・資金要件と申請フローについて詳しく解説します。

人的要件、施設要件と学んできましたが、それらを裏付ける資金がなければ許可は下りません。また、どれだけ準備が整っていても、申請手続きで失敗すれば元も子もありません。

次回は、必要な資金の計算方法から、実際の申請手続き、法令試験対策、許可後の手続きまで、実務の流れを一気に解説します。宮城県内で実際に許可を取得するための、最後のピースです。

  • 最低車両数5台の意味と車両の準備
  • 人件費・施設費・車両費の積算方法
  • 自己資金の証明と資金計画の立て方
  • 申請から許可までの具体的スケジュール
  • 法令試験の対策と合格のコツ
  • 許可後にすぐやるべきこと

宮城県全域で運送業の新規参入をお考えの方は、ぜひ次回もご覧ください。

あくまで基本的な要件となります。この他にも様々な要件・条件があり必ずしも上記要件をクリアしていなくとも許可・認可が下りる場合があります。
例)幅員について:極小指定道路や特殊車両通行認定申請等

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この記事を書いた人

Kentaro Oikawaのアバター Kentaro Oikawa 行政書士

K-TEC行政書士事務所 行政書士 及川憲太郎
K-TEC→ケーテックと読みます。事務所名は前職の屋号から
2024年に行政書士登録
行政書士として日々の業務に取り組む傍ら、コラムでは皆さまに役立つ情報を発信しています。どんなことでも気軽にお読みください!

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