宮城の行政書士による【墓地経営許可申請】ガイド(第1回)- 基礎知識と時代の変化

はじめに
少子高齢化、核家族化、そして価値観の多様化により、日本の墓地事情は大きな転換期を迎えています。墓じまいや樹木葬といった新しい選択肢が注目を集める中、寺院や宗教法人においても、時代のニーズに応える墓地経営が求められています。
本コラムでは、墓地経営許可申請の基礎知識から実務的な手続き、そして現代社会における墓地経営の在り方まで、寺院・宗教法人の皆様に向けて詳しく解説いたします。全3回のシリーズでお届けします。
第1回:基礎知識と時代の変化(本記事)
第2回:許可申請の実務と手続き
第3回:持続可能な墓地経営の実践
墓地経営許可とは
墓地経営の法的位置づけ
墓地の経営は、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)によって厳格に規制されています。墓地を経営するためには、都道府県知事(政令指定都市では市長)の許可が必要とされており、この許可なく墓地を経営することは違法行為となります。
墓地経営許可制度の目的は、公衆衛生の確保、国民の宗教的感情の保護、そして墓地経営の永続性と安定性の担保にあります。特に、墓地は一度設置されると長期間にわたって存続するものであり、経営主体の安定性と継続性が極めて重要です。
墓地経営が認められる主体
墓埋法および各自治体の条例により、墓地を経営できる主体は限定されています。
- 地方公共団体
市町村などの地方公共団体は、公益性の観点から墓地経営の主体として認められています。いわゆる「市営墓地」「町営霊園」がこれに該当します。 - 宗教法人
宗教法人法に基づいて設立された宗教法人は、その宗教活動の一環として墓地を経営することが認められています。日本の墓地の多くは、寺院などの宗教法人が経営しています。 - 公益法人等
公益社団法人、公益財団法人など、公益性の高い法人も墓地経営の主体として認められる場合があります。ただし、自治体によって取扱いが異なります。 - 株式会社等の民間企業について
かつては営利法人による墓地経営は原則として認められないとされてきましたが、最高裁平成24年判決以降、状況が変化しています。株式会社であっても「公益性・永続性」が十分に認められる場合には、墓地経営の主体として許可される事例が全国で出てきています。特に大規模な霊園型の民営墓地などで見られます。
宮城県の条例においても「その他知事が適当と認める者」という規定があり、理論上は株式会社が完全に排除されているわけではありません。ただし、実務上は極めてハードルが高く、現時点で宮城県内では株式会社による墓地経営の実例はほぼありません。寺院・宗教法人の皆様におかれましては、依然として最も確実に許可を得られる経営主体であることに変わりはありません。
寺院墓地の特徴と意義
寺院が経営する墓地(寺院墓地)は、日本の墓地の中核を担ってきました。寺院墓地には以下のような特徴があります。
- 宗教性との一体性
寺院墓地は、寺院の宗教活動と密接に結びついています。檀家制度を背景として、先祖代々の供養が寺院において継続的に行われてきました。 - 地域コミュニティとの結びつき
多くの寺院墓地は、地域社会の中で歴史的に形成されてきたものであり、地域コミュニティの精神的な拠点としての役割も果たしています。 - 永続性の確保
宗教法人としての寺院は、営利企業と異なり、倒産や廃業のリスクが低く、墓地経営の永続性を確保しやすいという特徴があります。この永続性こそが、宗教法人が墓地経営主体として最も適している理由の一つです。
時代の変化と墓地をめぐる新たな課題
墓じまいの増加とその背景
近年、「墓じまい」という言葉が広く知られるようになりました。墓じまいとは、先祖代々の墓を撤去し、遺骨を別の場所に移すことを指します。
墓じまいが増加している理由
- 後継者の不在
少子高齢化と核家族化により、墓を継承する子孫がいないケースが増加しています。また、子どもがいても遠方に居住しているため、墓の維持管理が困難という事情もあります。特に東北地方では、若者の都市部への流出により、この傾向が顕著です。 - 経済的負担
墓地の年間管理費や、定期的な供養のお布施などの経済的負担が重いと感じる人が増えています。特に、複数の墓を相続した場合、その負担は大きくなります。 - 価値観の変化
「家」制度の希薄化により、先祖代々の墓を守るという価値観が薄れてきています。個人主義的な考え方の浸透により、「自分が入る墓は自分で選びたい」という人も増えています。 - 寺院との関係の希薄化
都市化の進展により、檀家として寺院との関係を維持することが困難になったり、そもそも檀家意識を持たない世代が増えています。
墓じまいの法的手続き
墓じまいを行うには、「改葬」の手続きが必要です。改葬とは、埋葬された遺骨を別の墓地や納骨堂に移すことで、墓埋法に基づく許可が必要です。
改葬の手続きは以下の流れで行われます。
- 新しい受入先(改葬先)の確保と受入証明書の取得
- 現在の墓地の管理者から埋葬証明書の取得
- 現在の墓地の所在地の市区町村に改葬許可申請
- 改葬許可証の交付
- 墓石の撤去と遺骨の取り出し(閉眼供養)
- 新しい墓地への納骨(開眼供養)
寺院としては、檀家が墓じまいを希望する場合、これらの手続きに協力する必要があります。特に埋葬証明書の発行は墓地管理者の義務となります。
寺院にとっての墓じまいの影響
墓じまいの増加は、寺院経営に深刻な影響を与えます。
- 檀家の減少
- 墓地使用料収入の減少
- お布施収入の減少
- 無縁墓地の増加と管理負担
しかし、墓じまいは時代の必然的な流れとして受け止めざるを得ません。重要なのは、墓じまいを希望する檀家に対して柔軟に対応しつつ、寺院内に新しい形態の墓地(永代供養墓や樹木葬など)を用意することで、寺院との関係を維持する道を残すことです。
樹木葬の人気と新しい供養の形
従来の墓石を用いた墓地とは異なる、新しい形態の墓地が注目を集めています。その代表が樹木葬です。
樹木葬とは
樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標とする埋葬方法です。遺骨を土に還す「自然葬」の一種として位置づけられます。
樹木葬には、大きく分けて以下の形態があります。
- 里山型樹木葬
里山の自然環境の中に遺骨を埋葬する方法です。特定の樹木の根元に埋葬するのではなく、広いエリア全体を墓域とすることが一般的です。 - 公園型樹木葬
整備された公園のような墓地内で、樹木を墓標として埋葬する方法です。シンボルツリーの周囲に複数の遺骨を埋葬する形態が多く見られます。 - 庭園型樹木葬
寺院の境内などに庭園風の樹木葬エリアを設ける形態です。比較的小規模で、寺院の景観とも調和しやすいのが特徴です。宮城県内の寺院で樹木葬を導入する場合、この形態が最も現実的です。
樹木葬が選ばれる理由
- 自然回帰への志向
「土に還りたい」「自然の一部になりたい」という自然回帰の思想が、樹木葬を選ぶ大きな理由となっています。 - 墓石墓地よりも安価
墓石を建立する必要がないため、初期費用が抑えられます。一般的な墓石墓地が初期費用総額が100万円~300万円かかるのに対し、樹木葬は20万円~80万円程度で納まることが多いです。 - 継承者不要
多くの樹木葬は「永代供養」とセットになっており、継承者がいなくても寺院が永代にわたって供養してくれます。墓じまいの心配がない点が、大きな魅力となっています。 - 宗教・宗派不問
檀家でなくても利用できる樹木葬が多く、宗教や宗派を問わないケースが一般的です。これは、特定の宗教に属さない「無宗教」の人にとって選びやすい選択肢となっています。 - 環境への配慮
環境意識の高まりから、墓石という石材資源を使わない樹木葬を選ぶ人も増えています。
樹木葬の法的位置づけ
樹木葬も墓埋法上は「墓地」として扱われます。したがって、樹木葬を行うためには、墓地経営許可が必要です。
樹木葬を新たに始める場合の許可申請は、通常の墓地とほぼ同様の手続きとなりますが、以下の点に留意が必要です。
- 埋葬方法の明確化
遺骨をどのように埋葬するか(骨壷に入れるか、直接土に埋めるか、粉骨するかなど)を明確にする必要があります。 - 宮城県における注意点
宮城県では、令和に入ってから「散骨型樹木葬(粉骨して直接土に埋める形態)」については慎重な審査が行われるようになっています。環境への影響、特に地下水への影響について追加の検討を求められることが多く、実質的に「骨壷収納+一定期間後に合祀」という形態の方が許可を得やすい状況です。
樹木葬の導入を検討される際は、事前に宮城県または仙台市(仙台市内の場合)の担当部署に相談し、どのような形態であれば許可の見込みがあるか確認することを強くお勧めします。 - 区画の考え方
従来の墓地のように明確な区画がない場合でも、埋葬可能数や埋葬範囲を明示する必要があります。「このエリアに最大○○体」といった形で計画を示します。 - 樹木の管理
樹木の種類、植栽計画、維持管理方法について、具体的な計画を示す必要があります。特に、樹木が大きく成長しすぎた場合の対応なども考慮が必要です。
寺院にとっての樹木葬の意義
樹木葬の導入は、寺院にとって以下のようなメリットがあります。
- 新たな利用者の獲得
宗派不問の樹木葬を提供することで、従来の檀家以外からも利用者を獲得できる可能性があります。特に、墓じまいを検討している既存檀家に対して、寺院内での新しい選択肢を提供できます。 - 既存墓地の有効活用
墓地に空き区画がある場合、その一部を樹木葬エリアとして活用することで、墓地の稼働率を高めることができます。 - 時代のニーズへの対応
樹木葬という選択肢を提供することで、「時代のニーズに応える寺院」というイメージを打ち出すことができます。 - 永代供養料収入の確保
樹木葬は永代供養とセットになることが多く、まとまった永代供養料を得ることができます。この収入は、寺院の財政基盤の安定化に寄与します。
一方で、以下のような課題もあります。
- 初期投資
樹木葬エリアの整備には、設計、造園工事などの初期投資が必要です。規模にもよりますが、数百万円程度の投資を見込む必要があります。 - 従来の檀家との関係
「誰でも入れる墓」を作ることに対して、従来の檀家から懸念の声が上がる可能性があります。「長年お寺を支えてきた檀家と、新しく来た人が同じ扱いなのか」という声に対しては、丁寧な説明と理解促進が必要です。場所を分ける、檀家向けの特別料金を設定する、などの配慮も検討に値します。 - 管理の複雑化
樹木葬利用者と従来の墓地利用者では、寺院との関係性が異なるため、管理が複雑化する可能性があります。特に、樹木葬利用者は檀家ではない場合が多いため、法要への参加や寄付などを求めにくいという実態があります。
その他の新しい供養の形
樹木葬以外にも、様々な新しい供養の形が登場しています。
- 納骨堂
屋内に遺骨を納める施設です。天候に左右されずにお参りでき、掃除の手間もかからないため、高齢者や遠方に住む人に人気です。都市部では、立地の良い場所に建設されたマンション型の納骨堂が注目を集めています。
寺院の本堂や庫裏の一部を改修して納骨堂とする事例も増えています。既存の建物を活用できるため、新たに墓地用地を確保するより低コストで実現できる場合があります。 - 永代供養墓
継承者を必要とせず、寺院が永代にわたって供養する墓です。個別の墓として一定期間(13回忌、33回忌など)安置した後、合祀墓に移すタイプが一般的です。 - 合葬墓・合祀墓
複数の人の遺骨を一緒に埋葬する墓です。多くの場合、永代供養がセットになっています。費用が最も安価なため、経済的な理由で選ばれることも多い選択肢です。 - 散骨
遺骨を粉末状にして、海や山に撒く方法です。墓埋法上の「墓地」ではないため、墓地経営許可は不要ですが、節度を持って行うことが求められます。寺院が散骨のサービスを提供するケースも出てきています。 - 手元供養
遺骨の一部を自宅で保管する方法です。小さな骨壷やアクセサリーに遺骨を納めて手元に置きます。墓と併用する人も多くいます。
寺院が取り組むべき墓地経営の変革
時代のニーズを捉えた墓地の多様化
現代社会において、墓地に対するニーズは多様化しています。従来の「家族墓」だけでなく、様々な形態の墓を用意することが、寺院の持続可能性を高めます。
提供すべき選択肢の例
- 従来型の家族墓
先祖代々の墓を継承していきたいという伝統的なニーズは、今も一定数存在します。こうしたニーズに応え続けることは、寺院の基盤を守る上で重要です。 - 継承を前提としない個人墓・夫婦墓
子どもに負担をかけたくないという思いから、一代限りの墓を希望する人が増えています。一定期間個別に安置した後、合祀墓に移すシステムが一般的です。 - 樹木葬エリア
前述の通り、自然回帰を志向する人々のニーズに応える選択肢です。 - 永代供養の合祀墓
最も経済的な選択肢として、継承者がいない人や経済的に余裕のない人のニーズに応えます。 - ペット供養区画
ペットを家族の一員と考える人が増えており、ペットの遺骨を納める区画や、ペットと一緒に入れる墓へのニーズが高まっています。ただし、ペットの埋葬は墓埋法の対象外であり、人の遺骨と同じ墓域に埋葬することについては、事前に自治体への確認が必要です。
このように、様々な選択肢を用意することで、幅広い層からの利用を期待できます。
檀家制度の見直しと開かれた寺院へ
伝統的な檀家制度は、寺院経営の基盤でした。しかし、現代社会においては、檀家制度だけに依存した経営は困難になりつつあります。
檀家制度の課題
- 檀家の減少(少子化、都市への人口流出)
- 檀家意識の希薄化(特に若い世代)
- 高額なお布施への抵抗感
- 寺院行事への参加率の低下
開かれた寺院運営への転換
これらの課題に対応するため、檀家以外にも門戸を開く寺院が増えています。
- 墓地利用の宗派不問化
樹木葬や永代供養墓を宗派不問で提供することで、新たな利用者層を開拓します。ただし、本堂での法要は宗派の作法で行う、など一定の区別を設けることで、既存檀家との関係も維持できます。
「墓地は開放するが、寺院の宗教活動は従来通り」という線引きを明確にすることが重要です。 - 明確な料金体系の提示
お布施の「お気持ち」という曖昧さが、現代人には理解しにくい面があります。墓地使用料、年間管理費、各種法要のお布施の目安などを明確に提示することで、安心して利用できる寺院となります。
ホームページに料金表を掲載している寺院も増えており、透明性の高い運営が評価される時代になっています。 - コミュニケーションの活性化
ホームページやSNSを活用した情報発信、イベントの開催など、寺院との接点を増やす取り組みが効果的です。墓参りの時だけでなく、日常的に寺院とつながりを持てる仕組みづくりが重要です。
例えば、月1回の写経会、年数回の寺子屋(子供向け仏教講座)、お寺カフェなど、宗教色を前面に出しすぎない柔らかいアプローチも有効です。
第1回のまとめ
本記事では、墓地経営の基礎知識と、現代社会における墓地をめぐる環境の変化について解説しました。
重要ポイント
- 墓地経営には都道府県知事等の許可が必要
- 宗教法人は最も確実に許可を得られる経営主体
- 墓じまいの増加は避けられない時代の流れ
- 樹木葬などの新しい供養形態へのニーズが高まっている
- 多様な選択肢を提供することが寺院の持続可能性につながる
次回(第2回)では、墓地経営許可申請の具体的な手続き、必要書類、審査のポイントなど、実務的な内容を詳しく解説いたします。



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