【相続】による自動車の名義変更の方法 【行政書士】が徹底解説!

相続による自動車の名義変更(移転登録)の手続き 必要書類と注意点を行政書士が紹介
被相続人が所有していた自動車を相続人が引き継ぐ場合、そのまま乗り続けることはできません。運輸支局にて「相続による移転登録」の手続きを行い、自動車の名義(登録名義)を変更する必要があります。この手続きは、売買や贈与による名義変更とは異なり、相続を原因とする所有権の移転であるため、戸籍謄本や遺産分割協議書といった書類が求められます。
本記事では、普通自動車の相続に伴う名義変更手続きについて、必要書類、費用、実務上の注意点を行政書士の視点からわかりやすく解説します。さらに、法定相続情報一覧図の活用や車庫証明のポイント、よくある誤解についても詳しく紹介。相続手続きをスムーズに進めるための実践的なガイドとしてご活用ください。
相続による自動車の名義変更とは?
相続による自動車の名義変更は、被相続人(亡くなった方)から相続人へと所有権を移転する手続きです。この手続きを怠ると、自動車の登録名義が被相続人のままとなり、売却や廃車ができません。道路運送車両法に基づき、普通自動車の場合は運輸支局で手続きを行います。一方、軽自動車は軽自動車検査協会が管轄となるため、注意が必要です。

【相続】による名義変更の重要ポイント
相続による自動車の名義変更では、以下の2点が特に重要です
- 相続人が誰であるかの確定:法定相続人(民法886条以降)を戸籍謄本で証明。
- 誰が自動車を取得するかの決定:遺産分割協議(民法906条以降)で相続人の合意を明確化。
これらを証明するため、被相続人の戸籍謄本類や【遺産分割協議書】が必要です。単独相続(相続人が1人)の場合は協議書が不要ですが、複数相続の場合は相続人全員の同意が求められます。
必要書類一覧 相続による自動車の名義変更
普通自動車の相続による名義変更に必要な書類を以下にまとめます。書類は正確に準備することで、手続きの遅延や不備を防げます。
全件共通で必要な書類
- 自動車検査証(車検証):原本。コピー不可。
- 被相続人の除籍謄本:死亡事実が記載されたもの(戸籍法)。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本:連続性が確認できる一式。戸籍改製(例:2007年)により複数市区町村にまたがる場合も全て取得。
- 相続人の現在の戸籍謄本:新所有者のもの。
- 相続人の印鑑証明書:発行後3か月以内(運輸支局の慣行)。
- 新所有者の住所を証する書類:住民票(発行後3か月以内)、マイナンバーカードの写し、または公共料金の領収書など。
- 法定相続情報一覧図の写し:法務局発行。戸籍謄本の代用可(後述)。
- 車庫証明書:新所有者が発行後1か月以内に取得(車庫法)。
- 申請書(OCRシート第1号様式):運輸支局窓口または国土交通省HPで入手。
- 手数料納付書:登録手数料500円の収入印紙を貼付。
- 委任状:行政書士や代理人が申請する場合に必要。
遺産分割協議が必要な場合(複数相続)
- 遺産分割協議書または遺産分割協議成立書:自動車の取得者を明記。
- 協議に参加した相続人全員の印鑑証明書:発行後3か月以内。
書類準備のポイント:
- 戸籍謄本は市区町村役場で取得。遠方の場合は郵送申請も可能。
- 印鑑証明書は新所有者および遺産分割協議参加者全員分が必要。
- 書類の有効期限(特に印鑑証明書、住民票)に注意。
遺産分割協議書と遺産分割協議成立申立書の詳細解説
相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行い、誰が自動車を取得するかを決定します(民法906条)。この合意を文書化したものが遺産分割協議書または遺産分割協議成立申立書です。両者は法的効力において同等(民法907条)ですが、作成方法や用途が異なります。特に、自動車の評価額が100万円以下であることを証明する場合や、第三者による客観的な証明が必要な場合に、遺産分割協議成立申立書が活用されます。以下で、両者の特徴、作成のポイント、テンプレートを詳しく解説します。
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書は、相続人全員が直接作成し、署名・実印を押印する書面です。自動車の取得者を明確に記載し、運輸支局での名義変更に必須です。
特徴
- 形式:自由形式だが、車種、車台番号、登録番号を明記。
- 証明力:各相続人の実印と印鑑証明書で公的効力を確保。
- 作成者:相続人自身または行政書士等の支援。
- 用途:名義変更、不動産登記、銀行手続きなどに使用。
作成のポイント
- 全相続人の同意:相続人全員(配偶者、子、親など)の署名・実印が必要。
- 自動車の特定:車検証に基づき、車名(例:トヨタ)、車台番号、型式、登録番号を正確に。
- 印鑑証明書:発行後3か月以内を提出。
- 明確な文言:取得者を曖昧なく記述。
記載例
遺産分割協議書
被相続人〇〇〇〇(死亡日:2025年〇月〇日)の遺産について、以下の通り分割協議が成立した。
1. 相続人〇〇〇〇は、下記の自動車を取得する。
自動車:トヨタカローラ
車台番号:XXXXXX
型式:XXXXXX
登録番号:宮城 300 あ 12-34
2. その他の遺産は別途協議にて決定。
2025年〇月〇日
相続人:〇〇〇〇(署名・実印)
相続人:〇〇〇〇(署名・実印)
注意点
- 実印必須。認印や代理署名は不可。
- 車台番号は車検証で確認。誤記は不受理の原因。
- 複数車両の場合、車両ごとに取得者を明記。
遺産分割協議成立申立書とは
遺産分割協議成立申立書は、自動車の相続手続きの際に遺産分割協議書と同等の効力を持ち、運輸支局での自動車の名義変更に使用されます。自動車の評価額が100万円以下である場合や、相続人間の合意を正式に記録する必要がある場合に適しています。第三者の関与により、協議の公正性や透明性が向上します。
特徴
- 相続人自身で作成可能。複雑な相続や対立がある場合には専門家に依頼することも有効。
- テンプレートがあり、作成が容易。
- 自動車の評価額が100万円以下の場合のみ利用が可能。
使用か100万円以下である証明と査定書
自動車の評価額が100万円以下であることを証明する必要は、以下のケースで発生します:
- 相続税の非課税枠:相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下の場合、申告不要だが、税務署が評価額の証明を求める場合あり。
- 遺産分割の透明性:相続人間で評価額に異議がある場合、客観的な証明で紛争を回避。
- 運輸支局の要求:遺産分割の公正性を確認するため評価額証明を求めるケース(管轄による)。
証明方法:
- 査定書:中古車販売店、ディーラー、日本自動車査定協会(JAAI)発行の査定書。年式、走行距離、状態を基に時価を算出。
- 例:2010年式トヨタカローラ、走行距離10万km、査定額50万円。
- 取得費用:無料~5,000円程度(業者による)。
- 市場価格データ:中古車情報サイト(例:カーセンサー、グーネット)の同車種・同年式の価格を印刷。
- 自己申告:査定書がない場合、相続人全員の合意で「時価100万円以下」と記載。運輸支局では簡易証明で可の場合が多い。
- 記載例(成立申立書内):
自動車:トヨタカローラ 車台番号:XXXXXX 登録番号:宮城 300 あ 12-34 評価額:50万円(〇〇モータース発行の査定書に基づく、別紙添付)
作成のポイント
- 評価額の明記:100万円以下の場合は、査定書や市場価格データを添付(原本またはコピー)。
- 査定書の取得:信頼性の高い業者(ディーラー、JAAI認定)を選択。無料査定も活用。
- 評価額の合意:相続人間で異議がある場合、複数業者の査定を参考に。
- 運輸支局の対応:評価額証明は必須でない場合が多いが、管轄により異なるため事前確認を。
- 費用:行政書士への依頼は1~3万円。査定書取得費用は別途。
- 原本とコピー:運輸支局では査定書のコピーで可の場合が多いが、原本持参を推奨。
実務上のQ&A
- Q:査定書がない場合の証明は?
A:中古車サイト(カーセンサー等)の価格データや相続人全員の合意書で代用可。運輸支局に確認。 - Q:海外在住の相続人がいる場合
A:公証人認証(アポスティーユ)付き署名で対応。成立申立書は専門家が調整。 - Q:評価額が100万円超の場合
A:相続税申告が必要な場合あり。税理士に相談。
法定相続情報一覧図で手続きを効率化
従来、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式を提出する必要がありましたが、2017年導入の法定相続情報一覧図の写し(戸籍法120条の2)を利用することで、書類を簡略化できます。
法定相続情報一覧図のメリット
- 戸籍謄本の代用:戸籍の束を1枚の書類で代替。
- 多用途:運輸支局だけでなく、不動産登記、銀行口座解約、保険手続きでも使用可能。
- 取得方法:法務局で無料発行(戸籍謄本の取得費用は別途)。
- 時間短縮:複数機関での手続きが効率化。
注意点
- 一部運輸支局では、法定相続情報一覧図に加え、戸籍謄本の提出を求められる場合あり。
- 事前に管轄の運輸支局に電話または窓口で確認すると安心。
取得手順:
- 必要書類(戸籍謄本一式、申請書)を準備。
- 最寄りの法務局に申請。
- 審査後、法定相続情報一覧図の写しを発行。

車庫証明の取得と例外ケース
新所有者が自動車を使用する場所が変わる場合、車庫証明(自動車保管場所証明書)の取得が必要です(自動車の保管場所の確保等に関する法律)。
車庫証明の基本
- 申請先:使用の本拠地を管轄する警察署の交通課。
- 必要書類:
- 保管場所証明申請書
- 保管場所の所在図・配置図
- 自認書(自己所有の場合)または使用承諾書(賃貸の場合)
- 手数料:2,200円(都道府県により異なる)。
- 有効期限:発行後およそ40日。

車庫証明が不要なケース
手続きの費用とナンバープレートの変更
相続による名義変更は、管轄の運輸支局で申請します。以下は主な費用です:
- 登録手数料:500円(収入印紙)
- ナンバープレート代:1,960円(普通車) 希望番号は4,960円~
- 車庫証明手数料:2,200円
ナンバープレートの変更
令和7年6月よりナンバープレートの料金が変更となりました。

実務でよくある誤解と注意点
相続による名義変更は書類が多く、誤解が生じやすい手続きです。以下のポイントに注意しましょう。
戸籍と印鑑証明書の有効期限
- 戸籍謄本:有効期限はないが、最新のものを提出(戸籍変更の可能性を考慮)。
- 印鑑証明書・住民票:発行後3か月以内が慣行。遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は特に厳格。
相続人代表者だけで手続きは不可
- 代表者が手続きを進める場合でも、遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が必要。
- 勝手に単独で名義変更することは民法上不可能。
行政書士に依頼するメリット
相続による名義変更は、書類の収集や作成が複雑で時間がかかります。行政書士に依頼することで、以下のようなメリットがあります:
- 戸籍謄本や法定相続情報一覧図の取得代行:遠方の役所にも対応。
- 遺産分割協議書の作成支援:法的要件を満たした書類を準備。
- 運輸支局への申請代行:書類不備や再申請のリスクを軽減。
- 遠方相続人との調整:連絡や書類のやり取りを代行。
- 時間節約:忙しい方や手続きに不慣れな方に最適。
特に、相続人が複数いる場合や遠方に住んでいる場合、専門家のサポートが手続きの円滑化に直結します。行政書士の報酬は案件により異なりますが、5~10万円程度が目安(詳細は事前見積もりで確認)。
相続による名義変更の流れ
手続きの全体像
- 相続人の確定:戸籍謄本で法定相続人を確認。
- 遺産分割協議:複数相続の場合、誰が自動車を取得するかを決定。
- 書類準備:車検証、戸籍謄本、遺産分割協議書、車庫証明などを揃える。
- 車庫証明の申請:警察署で取得(必要に応じて)。
- 運輸支局で申請:書類と手数料を提出。ナンバー変更が必要な場合は返納・交付。
- 手続き完了:新しい車検証とナンバープレート(必要時)を受け取る。
所要時間
- 書類収集:1~数週間(戸籍謄本の取得状況による)。
- 車庫証明:平日 中3日(宮城県の場合)
- 運輸支局申請:半日
まとめ:スムーズな名義変更のためのポイント
相続による自動車の名義変更は、正確な書類と手順を踏むことでスムーズに完了します。以下のポイントを押さえましょう:
- 必要書類を準備:戸籍謄本、遺産分割協議書、車庫証明が必須。
- 法定相続情報一覧図を活用:戸籍謄本の束を簡略化。
- 車庫証明の有無を確認:使用の本拠、保管場所が変わらなければ不要。
- ナンバー変更に注意:管轄変更時は費用と手続きが発生。
- 専門家の活用:行政書士に依頼で時間と手間を節約。
自動車の名義変更は、相続手続きの中でも見落としがちな項目です。早めの準備と正確な書類整備が成功の鍵。遺産分割や戸籍収集に不安がある方は、行政書士への相談を検討してください。

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