【遺言書】に書くべき内容とその役割——行政書士が解説

【遺言書】の内容 【遺言事項と付言事項】 【死後事務委任】について
はじめに
遺言書は、自分の死後の財産や事務処理について意思を明確に残すための大切な書類です。法的拘束力を持つ「遺言事項」だけでなく、家族への想いを伝える「付言事項」も記すことで、遺産分割のトラブルを防ぎ、円満な相続につなげることができます。
また、最近では「おひとり様」の増加や、相続をめぐる家族構成の複雑化により、よりきめ細かい遺言が求められる傾向にあります。本記事では、行政書士の視点から遺言書の具体的な内容について解説します。
遺言書に記載すべき法的拘束力のある内容
遺言書には、民法で定められた「法的効力を持つ事項」を記載することができます。主なものを以下に挙げます。
相続分の指定(民法第902条)
遺言者は、法定相続分とは異なる相続割合を指定できます。
遺産分割方法の指定(民法第908条)
相続人間のトラブルを防ぐため、特定の財産を誰に渡すのかを指定できます。
遺贈(民法第964条)
相続人以外の第三者に財産を遺贈することが可能です。
祭祀承継者の指定(民法第897条)
仏壇やお墓などの祭祀財産は、特定の相続人を指定して承継させることができます。
遺言執行者の指定(民法第1006条)
遺言の内容を確実に実行するため、行政書士や弁護士などの専門家を遺言執行者として指定することが可能です。
付言事項の活用
付言事項とは、法的拘束力はないものの、遺言者の思いや理由を伝えるために記載できる内容です。
なぜこの分割方法にしたのか
家族への感謝の言葉
介護への配慮
納骨方法の指定(分骨の希望)
遺言書に納骨方法を指定することも可能です。例えば、
- 特定の墓地に納める希望 「私の遺骨は○○霊園の家族墓に納骨してください。」
- 分骨の希望 「私の遺骨の一部を○○寺の墓に納め、残りを長女○○に手元供養として保管してもらいたい。」
- 海洋散骨や樹木葬の希望 「遺骨の一部は海洋散骨を行い、残りは○○の墓に納めてください。」
分骨を希望する場合、火葬後に「分骨証明書」を取得する必要があります。しかし、遺言書が開封されるタイミングではすでに火葬が終わっていることが多く、証明書を取得し損ねるケースもあります。そのため、分骨を希望する場合は事前に家族や相続人に相談し、死後事務委任契約を活用することが重要です。
死後事務委任契約との関係
遺言ではカバーできない死後の手続き
遺言書に「葬儀を○○寺で執り行う」と記載しても、法的拘束力はありません。しかし、死後事務委任契約を結ぶことで、確実に希望どおりの葬儀が行われます。
残された家族の負担を減らしたい
故人の生前、死後の手続きには様々なものがあります。
- 葬儀・火葬の手配
- 納骨や永代供養の手続き
- 死亡届の提出(市区町村役場)
- 医療費・介護費の精算
- 住居の退去・解約手続き
- 公共料金・通信契約の解約手続き
- クレジットカードや各種契約の解約手続き
- 遺品整理業者の手配
- ペットの世話・引き渡し
- デジタル遺品の整理
相続の手続きだけでも相続人や残された家族には時間や労力など大変な負担があるなかで、これらの事務手続きを行う必要があります。
【おひとり様】に特に有効
身寄りのない人や、家族と疎遠な方は、死後事務手続きが滞る可能性があるため、行政書士や信頼できる第三者に委任することで安心できます。

遺言書を作成すべきタイミング
若年層でも検討すべきケース
- 会社経営者が事業承継を考える場合
- 未成年の子どもがいる場合(親が死亡した場合の後見人指定など)
- 事実婚状態にある場合(内縁関係では法定相続権がないため)
- 遠方に住む家族に財産を残したい場合
高齢になったら早めに作成を
- 認知症対策
遺言は、本人の意思能力があるうちに作成する必要があります。認知症が進行すると、遺言の効力が認められなくなる可能性があります。 - 介護施設や老人ホーム入居のタイミング
施設入居時には身元引受人が必要になったり、資産の管理方法を考える必要があるため、遺言や任意後見契約をセットで検討するのが理想です。 - 持ち家を処分する前
持ち家を売却するか、相続人に残すかを整理するため、遺言書の内容を明確にしておくと後の手続きがスムーズになります。

【オーダーメイドの遺言書】が求められる時代
行政書士が提供できるサポート
- 遺言書の内容設計
- 公正証書遺言の作成サポート
- 遺言執行者としての業務
- 死後事務委任契約の締結サポート
- 分骨証明書取得のアドバイス
遺言書+αの提案
【遺言書】+【死後事務委任契約】【遺言書】+【家族信託】など、個々の事情に合ったプランを提案することで依頼者の安心につながります。

まとめ
遺言書は単なる財産分割の手段ではなく、家族への想いを形にする大切なものです。特に、納骨方法や分骨の希望を付言事項として記載することで、遺族が迷わず手続きを進められるようになります。
早めに準備し、専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った【オーダーメイドの遺言書】を作成することをおすすめします。

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