宮城の行政書士による【墓地経営許可申請】ガイド(第2回)- 許可申請の実務と手続き

樹木葬
目次

はじめに

第1回では、墓地経営の基礎知識と時代の変化について解説しました。第2回となる本記事では、実際に墓地経営許可を申請する際の具体的な手続き、要件、必要書類などについて、宮城県の実務を踏まえて詳しく解説いたします。

墓地経営許可申請の要件

経営主体の要件

宗教法人が墓地経営許可を申請する際には、まず経営主体としての適格性が審査されます。

宗教法人としての適格性

宗教法人法に基づいて適法に設立された宗教法人であることが前提となります。具体的には、以下の点が確認されます。

  • 宗教法人としての登記が適法になされていること
  • 宗教法人規則が整備されていること
  • 代表役員(住職等)が適法に選任されていること
  • 責任役員会などの意思決定機関が適切に機能していること

申請時には、宗教法人登記事項証明書の提出が求められます。登記内容に変更があった場合(代表役員の変更、規則変更など)は、必ず最新の状態に更新しておく必要があります。

経営能力と永続性

墓地を長期にわたって適切に経営できる能力があるかが審査されます。

  • 財務状況の健全性
  • 後継者の確保状況
  • 墓地管理体制の整備状況
  • 過去の寺院運営実績

特に、新たに墓地を開設する場合には、初期投資の資金計画や将来的な維持管理費用の見通しについて、具体的な計画の提示が求められます。既存の寺院会計が健全に運営されていることを示す資料(貸借対照表、収支計算書など)が重要です。

墓地の立地要件

墓地の立地については、公衆衛生、生活環境、都市計画などの観点から厳格な基準が設けられています。

宮城県における距離要件

全国一律の基準はなく、各自治体の条例によって定められています。宮城県の場合、「墓地等の構造設備及び管理の基準等に関する条例」において以下のように定められています。

  • 学校・病院・図書館等からの距離
    これらの施設から100メートル以上離れていることが求められます。ただし、既存の寺院敷地内での墓地増設の場合、この距離要件が緩和されることがあります。
  • 住宅からの距離
    宮城県条例では、住宅からの明確な距離規制は設けられていません。ただし、「周辺の生活環境を害するおそれがないこと」という包括的な基準があり、実質的には住宅密集地での新設は困難です。住宅との距離や、地形・植栽による遮蔽状況などが総合的に判断されます。
  • 仙台市の場合
    仙台市は政令指定都市として独自の基準を持っており、集落境界から50メートル以上離れていることなど、独自の距離要件を定めています。仙台市内で墓地を計画する場合は、必ず仙台市の条例を確認する必要があります。
  • 既存寺院敷地内での増設の場合
    既存の寺院敷地内で墓地を増設する場合、距離要件は大幅に緩和されます。「既存不適格」として、現在の基準を満たさない立地でも許可される可能性が高くなります。ただし、周辺環境への配慮は依然として求められます。

都市計画法上の制約

墓地の設置は、都市計画法上の用途地域による制限を受けます。

  • 第一種・第二種低層住居専用地域
    原則として新設は困難ですが、既存寺院敷地内での墓地増設については「既存不適格」として認められるケースが宮城県内では多く見られます。大幅な拡張は難しいですが、小規模な増設であれば許可の可能性があります。
  • 第一種・第二種中高層住居専用地域
    条件付きで可能な場合があります。周辺環境への影響が小さいことを示す必要があります。
  • 工業専用地域
    原則として新設不可です。
  • その他の地域
    準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域などでは、比較的許可を得やすい傾向にあります。

墓地計画の初期段階で、対象地の用途地域を確認し、墓地設置が可能かを調査することが重要です。

環境保全要件

墓地の設置により周辺環境に悪影響を及ぼさないことが求められます。

  • 地下水への影響がないこと
  • 排水処理が適切に行えること
  • 日照、通風等への影響が最小限であること
  • 景観への配慮がなされていること

近年では、大規模な墓地の場合、環境影響についてのより詳細な検討を求められることがあります。特に、樹木葬で散骨型(直接土に埋める)を計画する場合、地下水への影響について慎重な審査が行われます。

墓地の設備要件

墓地として適切に機能するための設備基準が定められています。

基本的な設備

  • 墓地区画の明確な区分
  • 参道および通路の整備(幅員、舗装等)
  • 排水施設の設置
  • 境界柵または境界標の設置
  • 管理責任者の配置(常駐義務はありません)
  • 便所、水汲み場などの便益施設

宮城県における面積要件

  • 墓地全体の最小面積
    条例上の明確な最低面積は定められていませんが、実務上は300平方メートル以上が一つの目安となります。ただし、既存墓地の小規模増設の場合は、この限りではありません。
  • 1区画あたりの最小面積
    宮城県条例では最低1.5平方メートルとされていますが、実務上は2平方メートル以上が一般的です。墓石を建立する場合の使いやすさを考慮すると、2.5~4平方メートル程度が適切です。
  • 通路の幅員
    主要通路は1.5メートル以上、墓地内の通路は1メートル以上が標準的です。車両が通行する場合は、3メートル以上の幅員が必要です。

バリアフリー対応

高齢化社会を反映して、近年ではバリアフリー対応が推奨されています。義務ではありませんが、以下のような配慮が望ましいとされます。

  • 段差の解消またはスロープの設置
  • 手すりの設置
  • 車椅子でも通行可能な通路幅の確保(1.2メートル以上)
  • 駐車場の整備
  • 休憩スペースの設置

特に、新規に墓地を開設する場合や大規模な改修を行う場合は、バリアフリー対応を計画に盛り込むことが強く推奨されます。

墓地経営許可申請の手続き

事前相談の重要性

墓地経営許可申請を行う前に、必ず所管する自治体の担当部署(各市町村の環境衛生担当課)に事前相談を行うことが重要です。まず電話で連絡を取ることをお勧めします。

仙台市の場合 仙台市健康福祉局保健管理課に相談します。

事前相談で確認すべき事項

  • 当該地域での墓地設置の可否
  • 具体的な許可基準と条例の内容
  • 必要書類の詳細なリスト
  • 申請から許可までのスケジュール
  • 周辺住民への説明義務の有無と方法
  • その他の関連法令(建築基準法、農地法等)との関係
  • 樹木葬など新しい形態を計画する場合の留意点

事前相談は複数回行うことが一般的です。最初は概要を説明し、その後、具体的な計画を詰めていく中で、何度か相談を重ねることになります。計画の段階から自治体と十分に協議を重ねることで、申請後のトラブルを避けることができます。

周辺住民への説明

墓地経営許可申請の前提として、周辺住民への説明を実質的に義務付けています。

周辺住民の同意書は必要か?

各自治体により同意書の提出の有無は異なります。ただし、説明会の開催とその記録の提出は実務上必須となっています。同意を得ることではなく、住民に対して計画を説明し、質問や意見に誠実に対応したという事実が重要です。

説明会の実施

周辺住民への個別通知
説明会の開催日時、場所、墓地計画の概要などを記載した通知書を、周辺住民に配布します。通知範囲は、墓地境界から概ね100~200メートル以内の住民が一般的ですが、自治体の指導に従ってください。

説明会の開催
日時、場所を設定し、説明会を開催します。夜間や休日など、住民が参加しやすい時間帯を選ぶことが重要です。説明会は1回で済むこともあれば、住民からの要望により複数回開催することもあります。

説明内容

  • 墓地の規模と形態(区画数、面積など)
  • 環境への配慮(排水処理、緑化計画等)
  • 交通安全対策(道路の拡幅、駐車場の確保など)
  • 管理体制と連絡先
  • 将来的な拡張計画の有無
  • 工事期間と工事車両の通行ルート

質問・意見への対応
住民からの質問や意見には、誠実に対応します。すぐに回答できない事項については、後日回答する旨を伝え、必ず対応します。反対意見があった場合でも、丁寧に説明を続ける姿勢が重要です。

説明会の記録作成
説明会の日時、場所、参加者数、質疑応答の内容などを詳細に記録します。写真も撮影しておくと良いでしょう。この記録は、申請書類の一部として提出します。

説明会での反対意見への対応

住民から反対意見が出ることは珍しくありません。重要なのは、反対意見を封じ込めることではなく、住民の懸念に真摯に向き合い、可能な限りの配慮を示すことです。

例えば、以下のような対応が考えられます。

  • 緑化を充実させ、墓地が目立たないようにする
  • 駐車場を十分に確保し、路上駐車が発生しないようにする
  • 工事期間中の騒音・振動を最小限にする
  • 定期的な清掃を徹底する
  • 住民向けの連絡窓口を明示する

こうした配慮を計画に反映し、説明することで、理解を得られる可能性が高まります。

申請書類の準備

墓地経営許可申請には、多数の書類が必要となります。宮城県の場合の主な必要書類をご紹介します。

基本書類

  • 墓地経営許可申請書
  • 墓地経営計画書
  • 墓地管理規則(案)
  • 墓地使用規則(案)

墓地経営計画書には、墓地の名称、所在地、面積、区画数、構造設備、管理方法、収支計画などを記載します。

墓地管理規則には、管理責任者の配置、維持管理の方法、帳簿の整備などを記載します。

墓地使用規則には、使用者の資格、使用料、管理費、使用の制限、承継の条件などを記載します。

法人関係書類

  • 宗教法人登記事項証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 宗教法人規則
  • 責任役員会議事録(墓地経営決議)
  • 代表役員の印鑑証明書
  • 宗教法人の財産目録
  • 貸借対照表、収支計算書(直近3年分程度)

責任役員会議事録は、墓地を経営することを正式に決議した記録です。出席者の署名・押印が必要です。

土地関係書類

  • 墓地用地の登記事項証明書(全部事項証明書)
  • 公図の写し
  • 地積測量図
  • 現況測量図
  • 確定測量図
  • 土地の使用権原を証する書類
    • 所有地の場合:登記事項証明書
    • 借地の場合:賃貸借契約書
  • 周辺見取図(住宅地図に墓地の位置を示したもの)

土地の使用権原は極めて重要です。自己所有であることが原則とされ、当該土地での墓地の永続性が求められる。

設計図書

  • 墓地全体の配置図(縮尺1/500~1/1000)
  • 墓地の平面図、断面図
  • 給排水設備図
  • 外構図、植栽計画図
  • 各種施設の設計図(管理事務所、便所、水汲み場など)

図面は正確性が求められます。造園会社や建設会社、石材店に依頼します。

その他

  • 周辺住民への説明実施報告書
  • 説明会の議事録、写真
  • 環境影響評価書(必要な場合)
  • 関係法令に基づく許可・届出書類(建築確認、開発許可、農地転用許可等)

農地を墓地に転用する場合は、農地法に基づく農地転用許可が必要です。また、一定規模以上の開発を行う場合は、都市計画法に基づく開発許可が必要になることがあります。

これらの関連手続きについても、墓地経営許可申請と並行して進める必要があります。

審査と許可

申請書類を提出すると、自治体による審査が行われます。

審査の流れ

  1. 形式審査:書類の不備チェック
  2. 実体審査:許可要件の適合性確認
  3. 現地調査:立地状況、周辺環境の確認
  4. 関係部署との協議:都市計画課、環境課などとの協議
  5. 審査会への諮問(設置されている場合)
  6. 許可・不許可の決定

審査期間

各自治体により異なるが、おおむね以下のような審査期間となっています。

  • 新設・大規模拡張:6ヶ月~1年以上が標準的
  • 小規模増設(変更・拡張):~4ヶ月程度

書類の補正が必要な場合や、周辺住民との調整に時間を要する場合には、さらに長期化することもあります。

余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。特に、特定の時期(お彼岸、お盆など)までに墓地を使用開始したい場合は、逆算して早めに申請手続きを開始する必要があります。

審査における主な確認事項

  • 経営主体の適格性と経営能力
  • 立地の適切性(距離要件、用途地域など)
  • 設備の基準適合性
  • 周辺環境への影響
  • 住民説明の実施状況
  • 財務計画の妥当性
  • 管理体制の整備状況

審査の過程で、自治体から質問や追加資料の提出を求められることがあります。迅速かつ丁寧に対応することで、審査をスムーズに進めることができます。

許可の通知

許可が下りた場合、墓地経営許可書が交付されます。許可書には、以下の事項が記載されます。

  • 経営主体の名称
  • 墓地の名称と所在地
  • 墓地の面積
  • 墓地の区画数
  • 許可年月日
  • 許可条件(付帯条件がある場合)

許可には条件が付されることがあります。例えば、以下のような条件です。

  • 「使用者の募集範囲を檀家および○○市内在住者に限る」
  • 「許可から2年以内に工事を完了すること」
  • 「使用開始後1年以内に使用状況を報告すること」
  • 「年1回、管理状況を報告すること」

これらの条件は遵守する義務があり、違反した場合は許可取消の対象となる可能性があります。

不許可の場合

万一、不許可となった場合、その理由が通知されます。理由を確認し、計画を修正した上で、再度申請することも可能です。

不許可の主な理由としては、以下のようなものがあります。

  • 立地が基準を満たしていない
  • 周辺環境への影響が大きい
  • 住民の理解が得られていない
  • 経営能力に疑義がある
  • 書類の不備が解消されない

事前相談を十分に行い、自治体の指導に従って計画を進めていれば、不許可になる可能性は低いです。

墓地経営許可取得後の義務

使用開始の届出

許可を取得しても、すぐに墓地を使用できるわけではありません。工事を完了し、実際に使用を開始する際には、自治体に届出を行う必要があります。

  • 工事完了届
  • 使用開始届

自治体による完了検査が行われ、許可内容と相違ないことが確認されます。

変更許可・届出義務

墓地の経営内容に変更が生じた場合には、変更許可または変更届出が必要となります。

変更許可が必要な場合

  • 墓地の区域を拡張する場合
  • 墓地の区画数を大幅に増やす場合
  • 納骨堂を新設する場合
  • 墓地の大幅な改修を行う場合

変更許可の手続きは、新規許可とほぼ同様の手続きが必要です。ただし、既に許可を得ている部分については、審査が簡略化される場合があります。

変更届出が必要な場合

  • 経営主体の名称変更(宗教法人の名称変更)
  • 代表役員の変更
  • 墓地の名称変更
  • 管理規則の軽微な変更
  • 区画の軽微な変更(数区画の増減など)

変更届出は、変更後速やかに(通常は30日以内に)行う必要があります。

変更を行う前には、必ず自治体に相談し、変更許可が必要か、届出で足りるかを確認することが重要です。無許可での変更は、許可取消の事由となる可能性があります。

管理義務

墓地の経営主体は、墓地を適切に管理する義務を負います。

維持管理の内容

  • 墓地区域内の清掃、除草
  • 通路、排水設備の維持補修
  • 施設の安全点検と補修
  • 防犯対策
  • 災害時の応急措置

管理責任者の配置

墓地には管理責任者を置くことが義務付けられています。ただし、常駐である必要はありません。緊急時に連絡が取れる体制を整えておけば足ります。

実務上は、住職自身が管理責任者となり、連絡先を墓地内に明示しておくことが一般的です。

帳簿の整備

以下の帳簿を整備し、保管する義務があります。

  • 墓地使用者名簿
  • 使用料の収受状況
  • 埋葬の記録(埋葬年月日、被埋葬者の氏名など)
  • 改葬の記録

これらの帳簿は、自治体の検査の際に提示を求められることがあります。また、相続などで使用者が変わった場合の確認にも必要です。

近年では、これらの情報をデータベース化し、パソコンで管理する寺院も増えています。

報告義務

宮城県では、墓地の使用状況や管理状況について、定期的な報告を求めています。

年次報告の内容

  • 墓地使用者数の増減
  • 埋葬、改葬の件数
  • 無縁墓地の状況
  • 施設の維持管理状況
  • 苦情・トラブルの有無とその対応
  • 管理費の収納状況

報告様式は自治体から提供されます。毎年決まった時期(年度末など)に提出します。

報告を怠った場合、行政指導の対象となる可能性があります。また、変更許可申請の際に、過去の報告状況が確認されることもあります。

第2回のまとめ

本記事では、墓地経営許可申請の具体的な手続きと実務について解説しました。

重要ポイント

  • 宮城県の距離要件や審査期間など、地域の実情を把握することが重要
  • 事前相談を十分に行い、計画段階から自治体と協議する
  • 周辺住民への説明は実質的に必須
  • 審査期間は6ヶ月~1年以上を見込む必要がある
  • 許可取得後も、変更届出や定期報告などの義務がある

次回(第3回)では、墓地の財務管理、無縁墓地問題への対応、専門家の活用、そして持続可能な墓地経営の実践について詳しく解説いたします。

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この記事を書いた人

Kentaro Oikawaのアバター Kentaro Oikawa 行政書士

K-TEC行政書士事務所 行政書士 及川憲太郎
K-TEC→ケーテックと読みます。事務所名は前職の屋号から
2024年に行政書士登録
行政書士として日々の業務に取り組む傍ら、コラムでは皆さまに役立つ情報を発信しています。どんなことでも気軽にお読みください!

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