行政書士による私道・水道管等の寄付手続きと通行掘削承諾に関する包括的ガイド 【宮城県】
不動産取引や開発行為において、私道や上下水道管などのインフラを地方自治体に寄付する手続きや、通行掘削承諾書の取得は、複雑かつ重要なプロセスです。これらの手続きは、ライフラインの整備や管理責任の移管、売買契約の円滑化に直結し、不動産会社、ディベロッパー、測量会社、個人にとって不可欠なテーマです。本コラムでは、行政書士の視点からこれらの手続きを詳細に解説し、K-TEC行政書士事務所の具体的なサポート内容をご紹介します。
インフラ寄付の概要と意義
寄付とは何か
民間が整備したインフラ(私道、上水道管、下水道管、雨水排水管など)を地方自治体に無償で譲渡し、管理を移管する手続きを「寄付」と呼びます。このプロセスは、開発行為や分譲事業の完了後に、インフラの維持管理責任を自治体に移すことで、将来のリスクを軽減し、不動産の価値を高める目的で行われます。寄付の対象となるインフラには以下が含まれます:
- 上水道本管・取出管:飲料水供給のための配管。
- 下水道管:公共桝までの生活排水管。
- 雨水排水管:降雨時の排水を処理する管。
- 私道:建築基準法第42条2項道路(位置指定道路)やその他の私道。
寄付のメリット
インフラを自治体に寄付することで、以下のような利点が得られます:
- 維持管理責任の移管:老朽化による修繕や事故対応の責任が自治体に移り、民間の負担が軽減される。
- 信頼性の向上:公共管理下のインフラは、第三者(例:買主や近隣住民)からの信頼が高まり、売買や開発の障害が減少する。
- 不動産価値の向上:寄付済みのインフラは、将来の管理コストが明確になり、物件の市場競争力が増す。
- 法的リスクの回避:私有インフラの場合、民法第717条(工作物責任)に基づく損害賠償リスクが伴うが、寄付によりこのリスクが軽減される。
寄付の課題と留意点
寄付手続きには、自治体ごとに異なる基準や条件が存在し、以下のような課題が伴います:
- 自治体基準の適合:インフラの仕様(材質、施工方法、管径など)が自治体の技術基準に合致する必要がある。たとえば、福岡市では上水道管に塩化ビニル管(VP管)を指定する場合がある。
- 正確な図面の提出:測量図、設計図、工事完了図などの提出が求められ、測量士や設計士との連携が必要。
- 瑕疵担保期間:寄付後1~3年間、寄付者が修繕責任を負うケースが一般的(例:埼玉県では2年間の保証期間を設定)。
- 費用負担:寄付に伴う負担金(例:管理引継ぎ手数料)や、測量・登記費用が発生する場合がある。たとえば、測量費用は土地の規模により50万円~200万円程度かかることも。
- 所有者の同意:共有地の場合、民法第264条に基づき全員の同意が必要。共有者が多い場合や所在不明者がいる場合は、手続きが複雑化する。
- 地域差:自治体によっては寄付を受け付けない場合や、財政難からインフラの維持管理を民間に委託するケースもある。たとえば、埼玉県の一部自治体では財政難により寄付受入れを制限している。
通行・掘削承諾書の取得
承諾書の必要性
水道管、ガス管、下水道管などを新設・接続する際、私有地や私道を掘削する必要がある場合、土地所有者の承諾を得る必要があります。この承諾を文書化したものが「通行掘削承諾書」です。以下のようなケースで必要となります:
- 他人所有の土地を配管が通過する場合。
- 私道から公道への接続工事が必要な場合。
- 公共桝への接続ルートが私有地を通る場合。
承諾取得の課題
実務上、以下のような問題が頻発します:
- 所有者不明:土地の登記名義人が死亡し、相続登記が未了の場合、所有者の特定が困難。
- 共有者の多さ:共有地の場合、共有者全員の同意が必要だが、連絡先不明や意見の不一致が生じる。
- 相続未登記:被相続人名義のまま放置された土地が多く、戸籍調査や相続人特定が必要。
- 自治体の要件:一部の自治体では、承諾書を正式なフォーマットで提出するよう求める(例:福岡市では標準様式を指定)。
2024年法改正の影響
2024年に改正された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」により、所有者不明の場合、公告手続きを経て承諾を省略できるケースが増えました。ただし、公告には期間(通常3~6ヶ月)や費用(公告掲載料など)がかかり、行政書士や弁護士の関与が推奨されます。たとえば、埼玉県では、公告手続きを活用した私道寄付の事例が報告されている。
手続きの流れと行政書士のサポート
K-TEC行政書士事務所では、以下のようなプロセスで寄付や承諾書の取得を支援します。
対象不動産・配管ルートの調査
- 登記簿謄本、公図、地積測量図を取得し、対象地の所有者や権利関係を調査。
- 配管ルートを確認し、どの土地が工事に関与するかを特定。たとえば、福岡市での私道寄付では、隣接地の境界確認が必須。
関係者の特定と連絡
- 共有者や隣接地所有者を洗い出し、住民票や戸籍調査を通じて連絡先を特定。
- 所在不明者の場合、公告や戸籍調査を活用(例:戸籍附票で住所履歴を確認)。
資料作成と案内
- 承諾書、寄付申請書、説明資料を作成。自治体の指定フォーマットに対応。
- 地元住民には訪問説明、遠方の方には書面やオンラインで案内。
自治体への申請
- 寄付申請書や管理移管申請を提出。必要に応じて補足資料を作成し、自治体との折衝を代行。
- 例:埼玉県八潮市では、寄付申請時に管の材質証明書や施工写真の提出を求められる。
フォローアップ
- 承諾者や関係者への結果報告書を作成。必要に応じて説明会を開催。
- 売買契約に影響する場合は、特約条項の提案や助言を提供。
売買契約への影響と特約条項
インフラが私有のままの場合、売買契約書に管理責任に関する特約を記載することが一般的です。以下は典型的な文言例です:
対象不動産に接続する私道および上下水道管は、現在私有財産であり、買主は将来の維持・修繕費用を負担する可能性があることを了承する。なお、売主は寄付手続きを進めるが、自治体の受入れ可否については保証しない。
このような特約は、宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明にも関連し、買主にリスクを明確に伝える役割を果たします。当事務所では、特約の文言作成や、重要事項説明書の確認サポートも行っています。
私道・私有地寄付の注意点
私道や私設水道の寄付には、以下の点に留意が必要です:
- 接続状況の明確化:複数の家屋に接続する配管の場合、分岐点や使用状況を詳細に調査。例:下水道管が隣接地にも接続している場合、受益者負担の整理が必要。
- 所有者構成:単独所有か共有か。共有者の同意が得られない場合、寄付が頓挫するリスクがある。
- 境界確定:筆界未確定の場合、隣接地との境界確定測量が必要。費用は50万円~300万円程度かかる場合も。
- 費用負担:測量、登記、負担金などの費用は寄付者側が負担。自治体によっては、寄付後に維持管理費の一部を求める場合も。
インフラ寄付の社会的意義と具体的事例
近年、老朽化したインフラによる事故が全国で問題となっています。以下は、福岡と埼玉での具体的な事例です:
- 2016年11月、福岡市博多駅前の私道陥没事故:地下鉄工事に伴う雨水管の損傷が原因で、道路が15メートル以上の深さで陥没。幸い早朝で人的被害はなかったが、周辺の交通や商業活動に大きな影響を及ぼした。復旧工事は迅速に進められ、1週間で完了したが、インフra管理の重要性を浮き彫りにした。
- 2025年1月、埼玉県八潮市の道路陥没事故:42年使用された下水道管(直径4.75メートル)の腐食が原因で、道路が陥没し、トラックと74歳の運転手が飲み込まれた。硫酸によるコンクリート管の劣化が原因とされ、事故後、周辺12市町の120万人の住民に下水使用の制限が求められた。復旧には5~7年、費用は約300億円と見積もられている。この事故は、老朽化したインフラの点検不足と財政難によるメンテナンス遅延の問題を浮き彫りにした。点検が5年ごとに行われていたが、2021年の検査で「緊急修理不要」と判断されたことが問題視されている。
これらの事例では、民法第717条に基づく工作物責任や、近隣住民への影響が問題となり、所有者の責任が問われました。インフラを公共管理に移管することで、こうしたリスクを軽減し、地域全体の安全性を高めることができます。
K-TEC行政書士事務所の強み
当事務所は、以下のような実績と専門性でクライアントをサポートします
- 専門家連携:土地家屋調査士や司法書士と連携し、境界確定や登記手続きをワンストップで対応。
- 複雑な案件の解決:共有者・関係者40名以上の私道下の上水管の自治体への寄付や、連絡先が不明な関係者の調査を成功させた実績
- 地域密着:仙台市の自治体基準や慣行に精通し、スムーズな申請を実現。
まとめ
私道や上下水道管の寄付、通行掘削承諾書の取得は、不動産取引や開発行為において不可欠なプロセスです。これらの手続きを適切に行うことで、インフラの管理責任を明確化し、将来のリスクを軽減できます。特に、2024年の法改正や電子申請の普及により、手続きの効率化が進む一方、自治体ごとの基準差や所有者不明問題への対応は依然として課題です。福岡、埼玉での事故事例は、老朽化したインフラのリスクと、公共移管の重要性を改めて示しています。
K-TEC行政書士事務所は、こうした複雑な手続きをワンストップでサポートし、クライアントの負担を軽減します。ご相談は下記よりお問い合わせください。

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